こんにちは!
カズ社会労務士事務所 代表の佐久間和象です。
今回は年次有給休暇(以下、有休)についての記事です。
有休と言えば、労働時間や残業代などと同様に、人事労務上話題になりやすいテーマですよね。
また、一口に有休と言っても、その内容は様々です。
当事務所でも、企業様から有休に関する様々なご相談を頂きます。
今回はそんな有休の中でも、退職者に関する有休の取扱いについてご紹介したいと思います。
経営者の悩みの種?「退職者の有休消化」
退職者に関連する有休の問題と言えば、退職日までの有休消化が挙げられるのではないでしょうか。
退職者が自らの残っている有休を退職日までに(全て)消化することですね。
これは会社様からよくご相談頂く内容です。
どういったものかというと、
「退職者が退職日まで有休消化を希望してきたが全て認めないといけないのか」
「退職者の有休の希望を拒否して退職日まで何とか働いてもらうことはできないか」
こうした類のご相談です。
こうしたご相談の中には、
「有休消化を認めていたら引継ぎができない」
「退職日まで契約は残っているのだから最後まで働くべきではないか」
というように、企業や現場の部門の業務運営上支障が生じるから認められないと言った声や、感情的に認められない・常識的にどうなのか、という声が入り混じっていることも少なくありません。
退職者の未消化の有休取得・・・認めざるを得ません!
こうした声、思いがあることある意味仕方のないことかもしれません。
場合によっては退職日まで1ヶ月以上丸々有休消化をするようなケースもありますよね。
退職の申し出自体が直前であれば、確かに会社としては事業運営や引継ぎなど、難しい状況もあろうかと思います。
ただしです。
退職者に残っている未消化分の有休については、より一層その取得が尊重されます。
残っている有休について、退職者から申し出があれば認めざるを得ない、というのが結論です。
というのも、退職者には、退職日が決まっているが故、有休の時期を退職日以降に後送りにすることができません。
つまり、企業側が社員の有休取得時季を変更する権利を行使できる余地が無いということです。
(企業側が社員の有休取得の時季を変更する権利のことを「時季変更権」と言います。時季変更権を行使するためには、その社員が有休を取得することにより、事業運営に支障が生ずることが要件となりますが、その具体的な内容については今回は割愛します。)
希望のあった有休取得日について、(合意のうえで)退職日までの別の日に変更するということは可能性としては考えられますが、有休の取得自体を妨げることはできません。
有休については、もともと労働者の権利として強く保護されていることはご存知のことと思いますが、退職者に残っている未消化分の有休については、より一層その希望に沿う必要があります。
「そうは言っても現実に休まれては困る」
「現場を分かっていない」
こうした声も聞こえて来るかもしれません。
しかし、繰り返しご紹介している通り、有休の取得は労働者の権利であり、これを尊重することは事業運営上もとても重要なことです。
年次ごとにしっかりと、十分に心身のリフレッシュのために有休を使ってもらう。
退職時に未消化の有休が溜まっている状況そのものをむしろ課題として捉え、有休の本来の趣旨に沿って、企業としてあらかじめ計画的に有休取得を促進する、そのための環境・風土を整備する。
これは退職時のトラブルの未然防止のみならず、社員のマネジメントや組織の円滑な運営、そして生産性の向上に繋がるポジティブな取組みではないでしょうか。
有休をしっかりと取れる。それだけで差別化になる時代でもあります。
退職者との別れ方も、見方を変えれば一つの戦略になり得ますし、退職のタイミングに限らず有休をしっかりと取れる職場作りは今後さらに重要性を増していくのではないでしょうか。